最近有名になりつつある名古屋のモーニング文化は、実は名古屋発祥というわけでもなければ、モーニングに対する出費額もお隣の岐阜県に負けていたりと、ネームブランド先行型の名物である事は意外と知られていない。
もちろん名古屋のモーニングでは、コーヒーを注文すればパンやサラダ、ゆで卵などが標準的に付いてくる。
しかし岐阜や高知県では、茶碗蒸しやら何やらが付いてきたりと、名古屋とは比べ物にならないくらいのボリューム感あるモーニングが提供されているらしい。
しかし名古屋のモーニング文化は、コーヒーを注文すれば得られるお得感がメインではない。
喫茶店文化に心酔している生粋の名古屋人というのは、パジャマや部屋着のままで喫茶店で朝食を摂り、コーヒーを飲みながら中スポを読む。
この日常的な姿こそが、「名古屋名物」であるモーニング文化であると考える。
プレスされた小倉トーストを食べながらも、そんな事を考えているのは一種の病気ではないだろうか、とも思うが、せっかく名古屋でモーニングを食べるなら、この「小倉トースト」がモーニングで提供される喫茶店かどうかも重要だ。
そんな止まらない名古屋豆知識のような会話を続ける中川 八熊の言葉を、意外にも熱心に聴く美少女、大高 和音は幾度となくメモに筆を走らせていた。
よほど好きな相手なのだろう。
こんな見知らぬ男に助けを求めてまで、少女は意中の相手とのデートを楽しみたいのだ。
しかし少女曰く、少し話した事こそあるものの、意中の先輩とやらの趣味も興味もわからないのだそうだ。
しかも聞けば、デートの日はまだ二ヶ月ほど先の日曜日。
それまでに何パターンかの「管理人の考えるデートコース」を巡って、当日 どこにでも行けるように準備しておきたいのだそうだ。
熱心な物だ。
中川 八熊は素直に感心していた。
自分には、そこまで熱中できたものがあっただろうか…。
などとゆっくりと思いにふける時間は無い。
とりあえず今日は、いわゆる鉄板なデートコースを案内する事としよう。
ヒキニートの中川 八熊にとっては想像で、妄想でしか無いデートコースだが、画面の中の嫁とは幾度となく歩いたその道を、今日会ったばかりの美少女と歩くだけだ。何も変わらない。
朝食を済ませ、中スポを広げる年配客を横目に2人は店を後にする。
そのまま地下に入り、地下鉄を目指す。
地下鉄の駅への行きやすさも、喫茶リヨンの魅力の一つだ。
しかも地下街の喫茶店よりも混雑していない事が多い。
地下鉄乗り場に到着し、すぐに交通電子マネーを使って改札内に入ろうとする美少女を、中川 八熊は慌てて制する。
「…ちょっと待って、今日はドニチエコきっぷ買った方がいいから。」
ドニチエコきっぷとは、土日祝と毎月8日に「600円」で地下鉄と市バスが乗り放題になる魔法のカードだ。
あおなみ線やJR 名鉄線は対象外だが、基本的に名古屋の観光地は地下鉄と市バスだけで回れるので、まさにエコきっぷ無双状態だ。
基本的に地下鉄に3回以上乗るならエコきっぷがお得になるが、それ以上に「エコきっぷを持っていれば割引になる施設がある」というのが大きい。
というのは名古屋市交通局の受け売りでしかないが、使える物は使うべきだ。
エコきっぷ お得 とだけメモしている美少女が、この価値をどこまで理解しているかは置いておくが、券売機でエコきっぷを購入した2人は、ようやく地下鉄に乗り、今回の最初の目的地へと向かう事となった。
この小説は、カクヨムで連載されていた私の観光ガイドだよ~!
これまでのおはなし
1話-やはり名古屋の観光に来るリア充は間違っている。
2話-ネットの名前はハンネだと思った?
3話-やはりこんな青春ラブコメは間違っている。
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